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格闘家
格闘場に立っている俺の目の前には、筋骨隆々の格闘家。
腕を組み、仁王立ちしている。
無表情だが、俺を見下ろすその眼には、鬼気迫るものがある。
全てを叩き潰すことでしか自分の存在意義を示せないかのようなオーラが全身を覆っている。
こいつとは、子供の頃、同じ道場に通っていた。
そこでは、競い合いながら互いに腕を磨いていた。
こいつの父親も格闘家だったが、格闘中の打撃により亡くなった。
そして、こいつは道場を去り、強さを求めるため、あえて厳しい道を歩んでいった。
その後、どのような修練を積んできたのかはわからないが、身体中に刻まれた傷跡の数々が、今までの壮絶な格闘家人生を物語っている。
こいつは戦い続け、目の前の相手を倒し続けることでしか、生きている意味を見出せなくなっている。
このままだと、いずれ、こいつは格闘に潰されてしまう。
格闘の修羅と化した、こいつの目を覚まさせてやりたい。
格闘とは、自分を追い込み、自分の精神を鍛え、自分の限界を超え、自分自身を成長させるものであって、自分を壊すものではない。
ただ、俺も何の苦労もなく今までやってきたわけではない。
毎日の厳しい鍛錬に耐え、強い相手を倒し続けてきた。
絶対、負けられない!
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