役者

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役者

 という映画の試写会が終わった。 『格闘ゲームをしている小学5年生の幼馴染がサッカーで競い合うという漫画を描く少女の夢を見た巨大ロボットのパイロットが宇宙人のライバルと戦うという映画を撮る映画監督』 の役なんて初めてだったけど、カメレオン俳優と言われている俺にとっては問題なかった。 次回作の出演は決まっていて、その役作りは始めている。 毎日のようにジムに通い、タンパク質中心の食事を徹底し、プロテインも欠かさず、筋肉の増強に励んでいる。 今度の役は、格闘家だ。 強さを極めた格闘家同士の戦いという事を作りものではなく、リアリティのあるものにしなければならない。 ゲームの中という設定だが、観客が本当にそういう格闘家がいるんだ、と信じるくらいのところまで持っていく。 自己満足で終わらせないプロ意識だ。 前作の映画監督の役のイメージは、痩せ型で神経質という感じだったので、そういう体型を作った。 今度は、鍛え上げた肉体を駆使して戦う格闘家の役だから、真逆で苦労するのは目に見えているが、それを難なくこなすのが、カメレオン俳優と呼ばれる俺の得意とするところだ。 役作りは見た目だけでなく、気持ちも役が乗り移るぐらい入り込む。 格闘だけが生きる全てになってしまったライバルの目を覚まさせるために戦うという心理状態を深く読み解く。 そして、その相手役には俺のライバルが出演する。 そのライバルは、俺と同じくどんな役にでもなりきってしまうから、カメレオン女優と呼ばれている。 女優が筋骨隆々の修羅と化した格闘家を演じるなんて前代未聞だ。 格闘家役なら男の俺の方に有利なのは当たり前だ。 そんな条件で、女優の方が格闘家らしく見えてしまったら、おれの今後の俳優業に影響が出てしまう。 絶対、負けられない!
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