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「お前さぁ、結局汀の奴に構うのやめてないんだって?」
彼が何度目かの会話チャレンジに失敗した直後、そう声をかけてきたのは、彼に汀の名前を教えた友人だった。
「そうだけど」
「関わんない方が良いって言ったのに」
「別にいいだろ、俺がどうしたって」
「そりゃお前の勝手だけど、何が楽しいんだよ。一言も口利かねぇだろ、あいつ。追っかけ回してなんかあんの?」
友人の問いに、彼は逆に首を傾げる。
「なんかって何?」
「俺が訊いてんだけど? お前も大概物好きだよなぁ」
呆れ果てたように言われ、彼は少しむっとして眉間にしわを寄せた。
素気無くされ続けてなお諦めるつもりにならないのは、確かに自分でも物好きだと思わないでもない。しかし、それを他人に指摘されると少し反抗心が湧いてくる。
それを察したのか、友人はそう怒るなよと笑ってから、不意に表情を改めた。随分と真剣な表情だったので、思わず身構えた彼に対し、少し声を潜めるようにして友人が言う。
「あのさぁ、……前に言ったじゃん。汀、あいつ変な噂あるって」
「ああ、なんか言ってたな、そんなこと」
「あの後さ、結局気になってちょっと確かめてみたんだけど、それが要するに、あいつと関わると不幸になるとかそういうので」
「なんだそれ。小学校とか中学校とかのイジメでありそうな噂だなぁ」
「いやなんか、実際、あいつの周りで変なこと起きたとかあったらしいぜ」
その言葉に、はぁ、と気の抜けた返事を返して、今度は彼の方が呆れ顔になってしまった。
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