みどりのめのかいぶつ

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 (みぎわ)の両目が大きく見開かれる。そこにあの色が窺えないだろうかと覗き込もうとした彼は、ふと動きを止め、不思議そうに自身の喉に手をやった。  こぽり。  そんな音と共に、彼の口から何かが溢れてコンクリートの床を打った。  視線を落としてみれば、足元が濡れて日の光を反射している。そうして見ている間にも、その水濡れは後から後から面積を増やしていき、比例して、息苦しさが増していく。  思わず開けた彼の口から、大量の水がぼたりと落ちた。 「――――ッ!?」  口の奥、喉から肺、胃すら埋める水の感覚に、彼は必死に体内の水を吐き出そうとするが、水が尽きる気配はなく、空気の入り込む隙間をも奪って、ただただ彼の口から零れ落ちていく。  当然だ。床を濡らすこの水は、のだから。  普通であれば有り得ないその事態を、彼は当然に理解できなかった。とはいえ仮にそれが超常的なものでなかったとしても、今まさに陸で溺れている最中の彼には、理解するだけの余裕などなかっただろう。  倒れ、喉と胸を掻き毟りながら悶える彼は、さながら陸に打ち上げられた魚のようだ。その口から、鼻から、絶えず潮の香りがする水が滾々(こんこん)と湧き出でて、大きな水溜りを形成していく。
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