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診断所は、大きい研究施設を連想させるような所だった。
以前は、国立大学の一キャンパスだったそうだが、子供の数の減少と共に、生徒数がいなくなり、アビリティスコア診断所に生まれ変わったという話を、耳にした事がある。
私たち受験生は、まず大きくて机がずらっと並んでいる講義室のような部屋に通された。ここで、一次試験の基礎科目試験を行う。
受験番号を学校でもらっていたので、その番号のプレートが置いてある机を探して、着席する。
昔、大学受験というものがあるということを本で読んだことがあるが、この一次試験は、その大学受験の方式と非常に似ているらしい。
学校で習う国語や数学などの科目を制限時間内に解き、合計点数を出す。
その得点も、アビリティスコアを導き出すのに、とても重要な要素になってくるらしい。
各々、問題集やノートを見直したりして、緊張感が漂う中、試験官が説明を始めた。制限時間は国語、英語、数学、理科、社会の各科目60分。タブレットで問題を読み進め、マークや記述で解答を行う。
「はじめ」
一斉に皆目の前のタブレットのスタートボタンを押し、問題を解き始める。
最初は国語だ。タッチペンを持ち、文章の大切な所に丸を書いたり、線を引きながら、目の前の説明文を読み進めていく。
勉強は真面目に頑張ってきた方だった。
学年テストでは常に5位以内に入るように努力してきた。
しかし、段々と周囲の友達とテストの点数を開示し合う時に、悪いことをしているわけではないのに、引け目を感じるようになった。
「さっこちゃんは、かわいくて勉強もできて、本当羨ましい。すごいね」
周囲から、そういうことを言われる度に、笑顔でそんなことないよと言っていたが、毎回上手く笑えているか心配になった。
私が何の努力もしないで、勉強ができるようになったと思っているのか。何もやらないで、何かをできるようになる人なんかいないのに。
羨ましい?
あなたは、その言葉を発せるほど、努力をしたのか。勉強に向き合ってきたのか。
毎度、周囲からの「できて当然」というプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、必死の思いで頑張り続けてきた私に向ける言葉にしては、あまりに残酷な言葉だった。
「勉強したら、なりたいものになれるの?」
幼い私が、お父さんに投げかけた一声が脳内に響き渡る。
問題を淡々と解く。一科目目の制限時間は残り半分だ。
ページをめくりながら考える。
私は、一体何になれるのだろうか。
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