冤罪

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警察署の玄関前。病院職員風の白衣の男がふたりして、さっきのコオロギ怪人の古賀を白いワンボックス車に乗せようと躍起になっていた。 「こらあ。何をしてくれとんねん。わしは警視総監やぞう。逮捕されたいんかボケ」 俺はそのすぐ側を通り抜けた。振り返って警察署を見上げた。俺はしばらく警察署の外壁を見つめてから、晴れ晴れとした気分で前に歩きだした。 傾きかけた太陽に照らされながら、十五分ほど歩き続けた。帰宅途中らしい女子高校生がひとり、目の前に見えた。俺は女子高校生の後方十メートルの位置を維持しながら、同じ方向に歩いた。歩きながら、周囲を見た。人家はない。歩行者の姿も俺達ふたりの他にはない。クルマの通りもない。俺は獲物を追う野生動物のように猛然と駆け出し、女子高校生の背中に飛び付いた。 俺の七人目の獲物だった。 死体は、マンホールの中に放り込む。 たったそれだけで、死体が発見されるのは六ヶ月以上も先になる。場合によっては、一年ぐらいは誰にも発見されない。 夕闇の彼方に、俺の高笑いが溶けて、そして消えた。俺は、決して刑務所には入らない。俺は、決して死刑台には乗らない。俺は、獲物を探し続ける。 警察を向こうに回した戦いは、俺が生きている限り永遠に続くのだ。そして俺は、決して負けることがない。 了
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