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「……別に、現実に興味がないってわけじゃないんだ。
ただ、俺は、おまえみたいにモテるわけでもないし……それに、現実には、きっとセレンみたいな良いコはいないと思うから」
「現実にも、素敵な女の子は、たくさんいるよ。
……ただ、確かに、『そのコ』みたいな良いコは、なかなか、いないのかもしれないけれどね。
そのコ、自分の身を犠牲にして、世界のために戦ってるんでしょ?」
思わず、面食らいそうになる。「よく知ってるな」
「兄貴、俺、こう見えても、頭良いんだよ。
定期的にあらすじ聞かされたら、さすがに覚えるよ」
奏は少しだけ笑ってから、そのまま、す、と俺にもたれた。
「……俺にも、いるよ。好きなひと」
鼓動が、はやくなる。
「……相手は、どんな女性なんだ?」
そう訊くと――奏は目を閉じて、「いつも俺の傍にいてくれる、やさしくて、素敵な人だよ」と小さな声で言った。
奏が、少しだけ震えている事に。
俺は、気づかないふりをした。
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