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 そこでファミルは、はっとして目を覚ました。  彼は、工員宿舎のベッドにいた。  八人部屋の隣のベッドでは、アントーネがまだ眠っている。  夜明けにはまだいくらかありそうな時間だ。  夢、だった。  ファミルはまだ寝ぼけている頭で考えた。  今のは夢だ。  だって現実には、アントーネはチョークを買い、自分で描いたその絵で、お金を手に入れて、ちゃんと鉛筆と画用紙を買ったのだから。  ファミルは故郷にいるときからいつも、同い年のアントーネを、ちょっと頼りなくて気が弱い弟のように扱ってきた。  ずっと、アントーネの面倒を見てきたつもりでいた。  だけど今日、アントーネは自分でどうするかを決めたのだ。  余計なことを強制しなくてよかった、とファミルは思った。  もし、いつものように自分がすべてを決めていたら、今見た夢の通りに、何も変化の起こらない日常を、二人は延々と続けるだけだったかもしれない。  それに、パンを減らすことは、もともと食が細く体力のないアントーネには危険なことだったかもしれないのだ。 「ごめんな」  とファミルはアントーネの寝顔につぶやいた。
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