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二人はもと来た道を戻っていたが、その途中でアントーネは、あるベーカリーの主人が、店の前に建てた黒板に今日のメニューを書き込もうとしているのを見た。
その主人は、チョークでバケットの絵を描こうとしているらしいのだが、何度も描き直しては首をかしげている。
アントーネは立ち止まり、胸がドキドキするのを抑えながら、その主人にかける言葉を考えていた。
ファミルも気付いて立ち止まった。
ファミルはじっと、その黒板を見つめるアントーネを見守っている。
「あの」
アントーネが声をかけると、主人はびっくりしたように振り返った。
汚い子どもが立っていると思ったのだろう。眉をひそめて、「何か用か」と尋ねた。
アントーネは言った。
「それ、そのバスケットの中のパンを描くんでしょう。僕に描かせてもらえませんか」
主人は少し戸惑った顔をしたが、じゃあ、と言って、チョークの入った箱をアントーネに渡した。
そこには黄色や赤や茶色、青などさまざまの色が入っていて、アントーネを驚かせた。
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