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アントーネはまた苦笑した。
「何言ってるの。僕たちの給料で、買えるわけがないじゃないか」
たしかに二人は決まった工賃をもらってはいたが、それでは食べるのに精いっぱいで、ほかのことに使う余裕などまずなかった。
それに、絵具を買うお金があったなら、家に仕送りをしてやることができるだろう、とアントーネは思った。
公園で絵を売る人たちのおそらくほとんどが、絵で生計を立てている人たちではない。お金と暇が十分ある人たちが、趣味程度に商売しているのだ。
しかし二人には、趣味に使うお金の余裕などないし、朝から晩まで働き詰めで時間もない。
たぶん、ファミルも同じことを考えたのだろう。少しがっかりした顔をした。しかし、考え考えしながら、こう言った。
「だけどさ。毎日、パンを一個ずつ我慢することにして、少しずつお金を貯めれば……」
「無理だってば」
今度はアントーネは本気で吹き出した。
食べ盛りの二人が、重労働をしながら、ただでさえ少ない食事を減らすことも無理に決まっていたし、そんなことをしても、いつになったら画材がそろうか途方もない話だと思ったのだ。
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