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「それより、そろそろ買い出しに行こうか。遅くなっちゃうね」
アントーネは言う。
もともと二人が外へ出た目的は、一週間分の食材を買うことだ。
二人はもと来た道を、公園までゆっくりと戻った。
この公園からは八方に道がのびている。
商店街に行くには、まず公園に戻って、東へ行く道を通らなければならない。
「あいつ、またいるな」
公園の中央の噴水近くまで来たとき、ファミルが言った。
ファミルの視線の先には、くたびれたコーデュロイのジャケットを着た初老の男性が、噴水の縁に腰かけて、雑紙に包んだサンドイッチを食べている。
ほとんど毎週見かける人だった。
ときどき、じろりとこちらを見ていることがある。
そのジャケットの袖口とポケットの縁に、何か白い粉をたくさん付けているのが特徴的だ。たぶん白墨だろう。
教師だろうか、と二人は推測していたが、正体はわからない。
その人はいつも、公園から北に出る道を帰っていく。
北には小学校がある。
二人の推測は、そんなところが出所でもある。
しかし、日曜日に教師が学校から出てくるというのも、不思議な感じはした。
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