お金を貸して

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「お願いです、千坂さん。お金貸し下さい。いっぱい持ってるんでしょ。」  身なりは少し汚くて、洗濯していないみたいに洋服は汚れていた。  「いっぱいなんて、持ってる訳ないじゃない。」  うちのクラス一の金持ちの千坂さんは、その子を振り払った。  「だって、お父さんの会社すごく人気でしょ。絶対にお金持ちじゃない。このクラスの誰もがそう思ってるよ。」  負けじと攻めていく。たしか、汚い名前は園山珠だった気がする。身なりは汚いし、普段は物静かだから、いるもいないも臭い以外は変わらない。空気みたいだ。名前も苗字以外は詳しく覚えていないのはだからかもしれない。  「お父さんは、お金持ってるかもしれないけど、私は持ってないもん。ね、城山さん。」  「え、私?ええ、そうね。そう思うわ。」  友達を巻き込んだ。巻き込まれた城山さんにクラスのみんなの哀れみの視線が集まる。しかし、千坂さんはそんなことお構いなしだ。こちらも、負けじと守りを固める。  城山さんも、両親が会社を経営している。彼女はきっと、千坂さんの次にお金持ちだろう。  「あたしんちは、お父さんもお金を持っていないわ。お陰様で、あたしはみんなみたいに遊びに行けないの。少しでいいからお金貸して。」  「嫌ね。私は人並みにしかお小遣いを貰っていないの。あなたに貸すお金は、一銭もないわ。」  確か、少しして、園山さんのお母さんは亡くなった。彼女があれだけお金を欲しがったのは、きっとお母さんの医療費が必要だったからだという話になってクラスで、千坂さんは批判の的になった。勿論、城山さんだって批判する人間と化していた。彼女には罪がないのだから仕方ない。  それから少し経った。三年生になってクラス替えをした。私は、園山さんと同じクラスになった。そこで園山さんと話すようになった。  彼女の身なりは汚いままだった。しかし、母親の為にお金を借りようとしたことが評価されてあっという間に学級委員になるほどにクラスに人気になった。  そして、程なくして、理由はなんだか分からないが、千坂さんの両親は離婚した。母親方に引き取られたのだろう。苗字も、確か千坂じゃなくなった。彼女は一気に貧しくなった気がした。  園山さんはは学級委員を辞めるときに印象的なスピーチをした。確か、その時だった。箱をもらったのは。  「最初はお金がなくても、仲間がいればこんな風になれます。綺麗事みたいですが、そう胸を張れるようにこれからも私は頑張ります。皆さんも頑張ってください。そして、この箱を私の親友に送ります。将来、自分で稼いだお金で私は彼女に本物を送るつもりです。皆さん、今それを見てください。」
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