お金を貸して

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 明日は同窓会だ。久しぶりに中学の時の同級生たちと集まる。少し胸を高まらせて、着ていく服の用意をする。  ピンポーン、ピンポーン。インターホンがなる。誰かから届け物だろうか。画面を確認した母は、判子を持って外へ出た。  「あんた、お届け物よ。園山さんって人からだけど、誰かしら。」  「あー。園山さんね、うん、分かったすぐ行くからそこ置いといて。」  少し空返事風な返事の仕方になってしまった。けれど、母は、能天気な人だからそんなこと気にしないだろう。  消去法で明日着て行く服を白のレースの付いたワンピースに決めた。母が待ってるだろうから、その後急いで母の方へ向かった。  白い箱が置いてあった。  「園山さんって一体何者?」 母は、こちらを見てやけに真剣な顔で訊いてきた。  「中学生の頃の同級生だけど、それがどうかしたの?」  「あー、そうなのね。お金持ちがいっぱいいたクラスだったから。これは、その子たちの中の誰かなのね。いい友達を持ったわね。しかも、服を決めてる最中に届くなんて、意思疎通もバッチリね。」  「ううん、園山さんは違うよ。」  「違うって何よ。友達じゃないの?金持ちは本当にお金の使い方が粗いわね。だったら、いっそのこと現金でばら撒けばいいのに。なんか最近不景気だしね。」  「そういうことじゃなくて、園山さん、言い方悪いかもしれないけど、うちより経済状況大変そうな…確か貧困層だったよ。友達では、一応あったとは思うけど。こっちが親友だと思ってても、相手がどう思ってるかなんて分かんないからね。」  「何よ、そのコメント。良かったわね、彼女にとってあなたは親友だったみたいよ。これ見なよ。このブランド高いのよ、あんたも知ってるでしょ。」  よく見ると、箱には誰もが聞いたことがあるような某有名宝石ブランドのロゴが印刷されている。  「じゃあこれ、もしかして、中身が本物じゃないとかじゃない。確か昔も一回その子がやってたような気がするし。」  「そうかしらね、持った感じだとちゃんと中に入ってる気がするけどね。」  伝票のところには、「ブレスレット・ネックレス」と書いてある。そして、速達のところに丸が付いている。  「それに、その時は手渡しだったんじゃないの?郵送にするとそれだけでお金かかるのよ。わざわざそんなことにお金使うかしら。明日会う人間に速達で、偽物を届けるなんて、馬鹿な話。」  言われてみればそんな気も、してこないでもなかった。しかし、前述した通り能天気な母の話だ。あまり信頼性がない。園山さんを信頼しない彼女には確か偽物を入れたという前科があるのだ。  だから、開けてみる前に、箱の中身が偽物だった、その時の記憶を細部まで思い出すことにした。  
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