魔王だって召し上がる

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 ともあれ、俺はまだ魔族じゃないし懸念してた子供たちの魔族化は本人の意思だったし、遠い昔に魔物に襲われて死んでしまった親父はともかく、母親も村の人も元気だったし(いや、魔族かもしれないけど)。  じゃあ何も問題ないじゃん、と今日も今日とて魔王様の後をついてまわる。  疲れたと言いながら部屋の中でゴロゴロと転がりながら何かを考えていたかと思えば、おもむろにタンスを漁りあーでもないこーでもないと服を引っ張り出し、なんのコーディネートだか知らんけど、あっちとこっち、こっちとそっち、と合わせてみたり。  で、着替えるのかと思えば「飽きた」と一言呟いて散らかした服の上をゴロゴロと転がる。  そうして、ハタと気がついたように隣の続き部屋から細いガラスの入れ物を幾つも持ってきて妖しげな何かを引き出しから出せば、それがガラスの入れ物の中で何かの液体と混ざる。フワッと手を上げた先に白い何かが突然現れ無惨に切り裂かれる。こっそり覗けばよく煮物に使われる根野菜だとわかる。そうして野菜クズになったものの中からちょうどいいものを選んでガラスの入れ物に入れる。  ボフンという音がしたと思えば「あーやっぱり失敗だったー」と言うガルの声が聞こえて中身を魔法で消せば「うがー」とガラスを放り投げる。  上手いこと服の上に落ちたガラスはそのまま、そうでないものはガシャンと音をたてて割れてしまう。  かと思えば、部屋に備え付けの机に向かって何かを一心に書き始めた。ここへ来て一年、何かを学ぼうとは思わなかったせいで何が書かれているのか全く理解できないが、この部屋が散らかる様がよーくわかった。  くっそー・・・だから俺の仕事が増えんじゃねぇか、と服を片付けガラスを拾い集め、野菜クズをかき集める。  ガルが一心不乱に書きなぐっている間に部屋を元通りに戻したところで「もー!!」と言う声と共に紙が降ってくる。 「ガル!てめぇ!」  せっかく片付けたんだから汚すんじゃねえ!と怒鳴る声を遮るようにガルの部屋の大きく重い扉が音を立てて開かれる。
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