ジリジリ日照る廃墟の街

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ジリジリ日照る廃墟の街

大陸大戦とよばれる未曾有の戦争が何気におわった。勝者はいなかった。 戦いはどこぞの国の皇子が暗殺されたことがきっかけという。木牌がパタパタと倒れるように戦火が巻き起こり、世界中で戦争になり、お互いに正当性を主張した。「戦いは望まないが、敵を討伐する正義の戦いである」といって国民を煽り、熱狂させ、戦争へ邁進したのであるが、戦いが1年、2年、3年と続き、5年過ぎた頃どの国も、増える戦死者の数と追い詰められる経済に苦しみ。崩壊する政府も現れた。 厭戦気分が蔓延すると同時期に世界規模で奇病が流行った。原因も治療法もない。倒れたら死ぬ病気。戦争で若い男が死に、奇病で銃後の老人女子供が斃れた。そうすると戦争どころではなくなった。なし崩し的もう戦争はやめようとなった。 講和条約が結ばれた頃にはどの国も政治的、経済的に深く酷い傷を負うことになり、引きこもるように立て直しを始める。しかしどれほどの時間がかかるであろうか? バティック公国アクエンジア地方にある都市ロシウ。 隣国のルルレイ共和国と数年激戦に次ぐ激戦を繰り広げ、ロシウ市は攻防の中心地となった。 宣戦布告をうけた公国軍は頑強で長大な防衛陣地をロシウ市周辺に構築して共和国軍を迎撃した。共和国軍は最初の数ヶ月歩兵突撃と昼夜問わない大砲撃を陣地と後方の、補給基地としての都市に浴びせかけた。結果ロシウ市は悲惨な死の街と化した。 ロシウは小綺麗な国境の交流の街だった。友好の街だった。 今はただの廃墟と荒野、太陽がジリジリと白骨を照らす死の都市。
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