つとめて、がんばる

1/6
前へ
/6ページ
次へ
自分が嫌だなあと最近、多々、多々思う。 高坂稔は、頭を抱えた。 正確には、左手で酒を呑みながら。 安酒万歳、今夜はコンビニ白ワインと。 この薄っぺらい、後腐れない感が良いのだ。 お値段お手頃、安いからと、呑み易い、いろいろな意味で。 かと言っても、そう簡単に酔える程、酒に弱くはない。 頭はいつまでも、いつまでだって、冴えている。 今日の出来事を振り返る、無意味に、何度もリピートする。 ちょっとした出来事は、珍しく機嫌良く饒舌だった上司に、まるで同調するかのように口を動かしたこと。 今、思えばご機嫌取りみたいに見えなくなくもない。 昼休憩後、マイ箸を洗っていると、再雇用組のおじさんに話しかけれる。 「高坂くんはすごいねえ、いや、素晴らしい、よく、まあ、うん!」 主語は一切なかった。 それでも、ニュアンスでなんとなく理解出来てしまうのが嫌だ。 別に、高坂は忖度しているつもりなどないのだ。 ただ、こう、あれだ。 息をするように、気を遣ってしまうだけなのだと。 最近、社会人何年目だよお前と、セルフツッコミを入れながら自身の特性を知った。 いや、大学の先生が言っていた。 無意識に気を遣ったしまうんだねと、そういえば、言っていた。 高坂としては、友人たちに気を遣っていたつもりなど全くなかった。 だから、心外だと、なんとなく、漠然とその言葉に面白くないと思った感情を覚えている。 それは、そうだろう。 あれはある種の大学デビューだ。 面白みのある人間になりたいと、堅物に思われる自分を多少払拭でもしたかったのだろう。 初対面ではA型、共に過ごしていくうちにB型と納得される、もしくは断定される自分。 そういうパターン化が幼少期から続けば、言われ続けば、それこそ無意識にそうなるのも無理はない。 いや、意識していた、意識していたのか。 今更ながら、ああいうのが自分をつくる、ということだったのだろうか。 キャラ作りとまではいかないが、しかし、それでも、それなりには、明るかったのだ、あの頃は。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加