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昨日、清掃員のおばさまから、会社で多少、有利な資格を高坂が持ち合わせていると、知ったとき、あ、持っているんだ。
と、何だろう、意外そうに言われたののだ。
ニュアンスにマイナス感含み過ぎているのが嫌だった。
持っているんだねえ、ではなく、何というのか、高坂の前任者と比べられているような。
あんたみたいに薄っぺらくて弱い顔の奴が資格持っていて、強くてハキハキしていたあの子は持ってなかったのよね。
なんて、ほら。
嫌だなあ、そこまで読み取れる。
考え過ぎかと思いつつ、残念なことに人の思惑を読み取ることに案外長けているので、結構当たっているところだろう。
あの清掃員のおばさまは知らないのだ。
その前任者と、壊れたブルドーザーと称される上司が。
幾度となく口論からの、大人気ない喧嘩をしたということを。
刺すんじゃないかと思った、怖かったよ。
と、二つ年上の妻子持ちの先輩が、失笑していた。
そのような内部事情、おばさまは知らなくて当然のことだろうけど。
けど、なあ。
何だろうか、このモヤモヤは。
消えないモヤを晴らすかのように、高坂は酒をごくごく、喉を通して、胃に入れる。
感覚が少しでも良いのだ、麻痺してほしい。
何も考えなくて良いって、考えることを放棄できる世界は、おそらくそれなりに明るいだろう。
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