8人が本棚に入れています
本棚に追加
「はじめまして。セラルです」
教壇に現れた彼女は歯切れよくそう言った。あまりの流暢さに教室におおっとどよめきが走る。4月の風に絹のようにたおやかな髪がはらりとなびく。凛とした顔立ちには灰色の瞳が良く似合う。いやはや惑星Uの人は皆こんなに美人なのか。地球に生まれて良かった…と密かに胸を撫で下ろす美沙であった。
セラルは快活に挨拶を続ける。
そんな彼女が眩しくて、美沙はすっと目線を机に落とす。飛んできた桜の花がヒラヒラと美沙の机に着地する。息をふっと吹きかけると、再び窓の外に飛んで行った。
それから暫くは、彼女を一目見ようと学校中が大騒ぎだった。しかしそれもすぐに落ち着き、彼女は日常になっていった。持ち前の明るさで、早くもクラスに馴染んでいる。沢山の人に囲まれ、笑顔で言葉を交わしている。
そんな様子を美沙は自分には関係ないや、と横目で眺める。
あの日までは、彼女と関わる事なんてないと思っていた。そうしてセラルは1ヶ月後には留学期間を終え、星に帰っていくものだと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!