エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。

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「ルクソニア嬢。あなたはとても気高い方だ。私はあなたに出会えて、とても光栄に思う。 そんなあなたに敬意を表して、私の秘密をひとつ、教えてあげよう」 「……ヨドの、秘密?」 「そう、私の秘密だ。 聞いてくれるだろうか、ルクソニア嬢」 ルクソニアはドレスの裾を軽く引っ張りながら、頷いた。 「私はね、魔法が使えない代わりに、ほんの少しだけ先の未来をみることができるんだ」 「未来がわかるの?」 「ほんの少しだけ先のね。 だから私は、いま旅をしているんだ。 色々なところをまわって、色々な人々の運命を知るために」 「知って、どうするの?」 「この国の行く末を、見届けたいと思っているよ。そのためになにが最善か、答えを探しているんだ」 「答え……?」 「そう、見つからないかも知れないけどね。 ルクソニア嬢が読んだ本は、きっと古い慣習を書いたものだね。今は、ほんの少しだけ、その本とは違う部分もある」 「例えばどんな?」 「例えば、そうだな。 たとえ魔法が使えなくても、私のように別の得意なことで認められて、生活しているものも少しだけだが、いるよ」 「少しだけ?」 「そう、少しだけ。 その少しの人間は、諦めずに道を探し続けて、自分の居場所を自分で作ったんだ」 「自分で……」 「ルクソニア嬢。 これからあなたがどうすればいいか、もうわかるだろう」
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