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「ところでルクソニア。俺の聞き間違いじゃなけりゃあ、お前さん、勝手に森へ行ったのかい?
危険だから森へ近づいちゃいけねぇって、いつも口酸っぱく言い聞かせてたよなァ?」
それを聞いたルクソニアの顔から、ぶわっと汗が吹き出る。
「エドガーにアン、その他もろもろ、俺ァ報告受けてねぇが、どういうこった。
まさかとは思うが、隠し通す気だったんじゃあないよなァ?
俺が風の精霊から何も聞いてないとは、まさか思ってもないだろうしなァ」
泣きぼくろが印象的なメイドとエドガーを交互に見て、リーゼンベルクが言う。
ふたりはそれを聞き、顔色を悪くさせながら動きがぎこちなくなった。
「なんとか言えよ、お前らァ。
言い訳ぐらい聞いてやんよォ」
目を細め、スープに入ってたギャタピーのヒレをバリボリ音をたてて食べる、リーゼンベルク。
そんななか、赤の王子の右腕・ジュドーが同じくギャタピーのヒレをボリボリ頬張りつつ、のんきに言った。
「これ本当に魔獣だって考えなけりゃ、ふつーにうまいな。そう思わないか、ヨド殿」
無邪気にバリボリボリ食べているジュドーの姿を見て、ヨドは毒気を抜かれて微笑んだ。
「たしかに、今まで食べたことのない味だが、美味だ」
「だよなあ、うまい」
スープにがっつくジュドーとは正反対に、ヨドは優雅なしぐさでスープを飲んでいた。
最初に口を開いたのはエドガーだった。
「俺が魔獣の餌を作ってる最中に、アンさんらが見落として、お嬢様を一人で森へ行かせてしまいました……。報告が遅くなったのは謝ります。しかし、一刻を争う事態だったため、まずはお嬢様を見つけることを最優先に動いていたんで、あとからのご報告になり、申し訳ありませんでした。悪いのは全部、見落としたアンさんらにあります!
俺、頑張ったんすよ!
なので、減給はなしでお願いしたいっす!」
眼鏡を光らせて訴えるエドガーに、お団子頭のメイドが声をあげた。
「あ、ずるいですよ、エドガー先生!
それじゃあ受け持ちで見落とした私が悪いみたいな流れになるじゃないですかあ!
連帯責任ですよ、連帯責任!
エドガー先生もそう言ってたじゃないですかー、探すときー!」
それに続いて泣きぼくろが印象的なメイドも、瞳を潤ませてリーゼンベルクに訴える。
「確かに見落としてしまったのはお団子頭のメイドの落ち度です! でもわたしたちはその後、必死でお嬢様を探しだしました。報告はこのあと、お嬢様の聞き取りを終えてから、エドガー先生の方からする予定でした」
「あ、何勝手に俺へと責任転嫁してるんすか!
報告義務はアンさんにもあったはずっすよ」
「私はほら、おもてなしの準備があったので……時間があったエドガー先生がまずご報告するべきだと思いませんか?」
と、泣きぼくろが印象的なメイドは、潤んだ瞳で胸に手を当てて言う。
エドガーは死んだ魚のような目をして、リーゼンベルクを見ると言った。
「旦那様、俺は減給されてもいいんで、アンさんらもろとも減給してくださいっす」
リーゼンベルクはそれを見て、くっくと笑った。
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