エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。

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ルクソニアはヨドの瞳を見つめた。優しい眼差しが、ルクソニアに向けられている。 「ヨド。わたし、お城にもどるわ。 そしてたくさん勉強をする。 胸を張って、お城のみんなと暮らすために」 強い決意を秘めたルクソニアのまなざしをみて、ヨドは微笑んだ。 「それはとても素敵な考えだね、ルクソニア嬢。 あなたならきっと、自身の数奇な運命をも、乗り越えられるだろう」 ルクソニアはそっと、ヨドの頬に触れた。 「それは、あなたの預言? ヨドにはわたしの未来がみえているんでしょう?」 ヨドは静かに、頬に触れているルクソニアの手に自分の手を重ねた。 「これは預言ではないよ、ルクソニア嬢。 ただそうあってほしいという、私の祈りだ」 「祈り?」 「そう、祈り。 未来というのはうつろいやすく、夢のように儚い。決まっているものなんて、本当は何一つありはしないのかもしれない。 ルクソニア嬢。 あなたがあなたらしく、気高さを忘れずに歩いていけるように。素敵な出会いと、学びと、ささやな喜びに満ちた未来をその手で掴めるように、私は祈るよ」 「ありがとう、ヨド。 わたしもあなたの未来が、喜びと愛に溢れたものになるように、ともに祈るわ」 「ありがとう、ルクソニア嬢」 あたたかな木漏れ日が射し込む森のなか、ふたりは穏やかに微笑んだ。近くにいた小鳥が、ふたりを祝福するかのように軽やかにさえずる。
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