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「もう、大丈夫よ。大袈裟ね!
わたしも何回も食べているけれど、何も起こってないのよ。
ただの美味しい白身魚なんだから!」
ふんすと鼻息荒く言うルクソニアに、ジュドーは眉をハの字にした。
「子供が食べても安全なんっすから、そんなにびびらなくても平気っすよ、ジュドー様。
ヨドさんも冷めない内にどうぞ」
ジュドーはジトーッとエドガーを物言いたげに見つめていたが、口を開いた。
「そこまで言うなら信じるけどよ、何であえて魔獣なんて危険な生き物を、子供に食べさせようと思ったんだ?
何かあってからだと遅いぞ」
エドガーはにかっと笑ってこう返した。
「『食べれる魔獣で一攫千金!
おいでよ、はじまりの森!』ってキャッチフレーズでこの森の集客をしようと思いまして。ね、旦那様♪」
エドガーがリーゼンベルクに話を振ると、ニヤリと笑ってジュドーにこう返した。
「まぁなァ。
金はいくらあっても困らねぇし、目新しいモンぶら下げて客寄せするのも、ありっちゃあアリだろう?」
ジュドーが言った。
「なしっちゃあなしです!
誰かが最初に毒味する必要があるでしょう。
事故って毒の部分を食べさせてしまったらどうするつもりだったんですか」
「うちのメイド長が回復魔法の使い手なんで、もし事故って毒が回っても大丈夫っすよ!
アフターケアもバッチリっす!」
親指をたてるエドガーに、ジュドーはため息をついた。
「事故ること前提の研究かよ……。
さすがは血濡れのエドガー、倫理観がおかしい……!」
その時エドガーは、ヨドに水を次いでいた泣きぼくろが印象的なメイドと目があった。
(真相を知られるのは面倒くさいことになりかねないし、アンさん。
くれぐれも魔力アップの人体実験だって事、内緒にしててくださいよ……!)と、目で訴えるエドガー。
泣きぼくろが印象的なメイドはゆっくりまばたきを一回した。
真意が伝わったと言うサインを受け、少しほっとした表情を見せるエドガー。
リーゼンベルクがそれをめざとく見つけ、クックッと笑いながら言った。
「ずいぶん仲良くなってるじゃねぇか」
「なんの話っすか?」
エドガーは内心ひやひやしながらも、リーゼンベルクに聞いた。
「さぁ、なんの話かねェ」
言いながらギャタピーを口に運ぶ、リーゼンベルク。
主の許可なくトップシークレットな話を独断で開示したことがバレたらと思うと、エドガーは生きた心地がしなかった。
一方泣きぼくろが印象的なメイドは、涼しい顔をして業務をこなしている。
踏んできた場数が違うのだと言わんばかりの堂々たる態度だ。事情を知っている分、内心エドガーは舌を巻いた。
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