エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。

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ヨドは静かに立ち上がると、白く美しい手をルクソニアに向けて差し出した。 満面の笑顔でその手をとる、ルクソニア。 土で汚れたドレスの裾を払うと、自分の倍以上もあるヨドを見上げた。 「わたしはこれからお城にもどるけど、ヨドはどうするの?」 「ぜひお供をさせてもらうよ、ルクソニア嬢。 この土地を治める貴族・リーゼンベルク殿に用事があるからね」 「まあ、本当に? パパにお客さまなんてめずらしいわ! 大抵みんな、入場料を払ったあげく、この森を抜けてお城に来るのを嫌がるもの!」 「それはなんて勿体無いことだろう。 こんなに聡明で愛らしいご令嬢と会うことが出来るし、画期的なシステムを一代で築き上げた奇才・リーゼンベルク殿のお話も聞けるのに」 ヨドの言葉に、ルクソニアは嬉しそうに笑った。 「そんなことを言うのはあなただけよ、ヨド!」 そう言ってルクソニアは、軽くスキップしながらヨドの脇をすり抜け、城へと続く道を数歩進んだ。そしてふわりとドレスの裾をはためかせながら、後ろにたたずんでいるヨドを振り返る。 「どうしたの、ヨド! 置いて行っちゃうわよ?」 イタズラっぽくウインクをするルクソニアに、ヨドは穏やかな笑みを浮かべながらそれに続いた。
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