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その頃、丘の上の古城では、ルクソニア捜索隊が、城主の目を盗んで結成されていた。
城の庭に集まったのは、事情を知っている数名の使用人たち。メイド5人と庭師3人、ルクソニアの家庭教師の計9名である。
どんよりとした空気を背負いながら、情報共有が始まる。
「ほんっとーに、城の中にはいなかったんすか?」
ルクソニアの家庭教師で森の管理も任されているエドガーが、物言いたげな目でメイドたちをみて言った。
「牛舎とか農場とか敷地内の他の施設も、ちゃんと探したんすよねー?」
かけていた眼鏡を逆光で光らせながら、中指で眼鏡の位置をくいっと直すエドガー。
「も・ち・ろ・ん・ですっ!
城中くまなく、きちんと探しました!
でも、お嬢様の姿がどこにも見当たらなかったんです!」
お団子頭のメイドが、握りこぶしをぶんぶんふりながらエドガーに力説する。
「はあー、ちょっともーしっかりしてくださいよー! それが仕事でしょー?」
盛大にため息をつくエドガーに、お団子頭のメイドはムッとし言い返そうとしたが、側にいた泣きぼくろが印象的なメイドが、それを止めた。
「どうやら城の外へ出てしまわれたみたいなの。エドガー先生、お嬢様を探すお手伝い、していただけませんか?」
泣きぼくろが印象的なメイドは、潤んだ瞳でエドガーを見つめた。そんな彼女を、エドガーは冷めた目で見る。
「あー、そういうのいーんで。
おばさんの上目遣いとかいらないし」
泣きぼくろが印象的なメイドの、笑顔が凍った。エドガー以外のまわりにいた人間が、彼女を必死でなだめる。
「そんなことより、とっととお嬢様探しましょー。
時間がたてばたつほど、後々面倒臭くなる確率増えるんで、サクサク行動するっすよー」
エドガーは懐からジャバラ状に折り畳まれた森の地図を取り出すと、皆に見えるように広げた。
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