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「とりあえずまずは、お嬢様がどこにいるかなんとなくアタリをつけて、一つ一つ潰していくしかないっすねー」
「うへー、それってしらみつぶしに森のなかを歩いて探すってことだよなァ?
時間がいくつあっても足りねぇんじゃねーか?」
筋肉もりもりな庭師がげんなりする。
「いや、闇雲に森のなか、歩く訳じゃないっす。アンさん、確か風魔法使えたっすよね?」
凍りついた笑顔を張り付けながら、泣きぼくろが印象的なメイドがそれに答えた。
「正確には、空気を任意の周波数で振動させる風の魔法が、ほんのすこーし使えるだけです。
エドガー先生みたいに優秀な魔法使いではありませんから、広範囲に複数の転移魔法をはったりとかは出来ませんけど、それがなにか?」
庭に吹き荒れるピリピリとした冷たい空気を涼しい顔で受け流し、エドガーは話を続けた。
「それでいいっす。
魔法の範囲はどれくらいまで使える感じっすか?」
泣きぼくろのメイドが地図を指差し、指先をスライドさせながら説明する。
「そうね……。
頑張って広げても、このくらい。半径5キロメートルあたりが限界かしら」
「じゃあ地図を分割して、ここと、ここと、ここ、あとこことここの5ヶ所。
転移魔法で飛ばすんで、そこから全力で、耳では聞き取れないレベルの高周波、流してもらってもいいっすか?」
お団子頭のメイドが首をかしげた。
「高周波?」
「今回の場合は、人間の耳では聞き取れない音の波の事をさすっすね」
お団子頭のメイドが目をぱちぱちさせてたずねた。
「それって、私たちの耳では聞き取れない音を流すってことですよね?
それ流す意味あるんですか?」
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