エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。

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「どうしてゲート、片手幅に縮小するんですか? そのまま出入りできた方が楽だと思うんですけど」 「あーそれはまあ、魔力消費抑えんのと、あと多分目標物まで歩かなきゃなんないんで、その間開けっぱにしちゃうと魔獣とか利用者とか、こっちに来ちゃう可能性あるんすよ。 完全に閉じると、こっち戻んのに歩きになるし効率悪いんで、縮小って形で残しとくっす。 ……ピースはまあ、面白半分で手ぇ突っ込む利用者との差別化ってことで」 「ゲートに手ぇ突っ込むやつ、いんのかよ……」 筋肉もりもりな庭師がぼやいた。 「転移魔法は治癒魔法と同じくらい、まーまー珍しい魔法なんで、転移ゲート自体見たことない人多いんすよ。 前にちょっとした用で森にゲート開いて、さっと帰るつもりで開けっぱにしといたら、なんか度胸試し的な感じで通って来ちゃった人いたんすよねー。まーそれの予防っす」 「通って来ちゃった人が過去にいたのね……」 泣きぼくろが印象的なメイドが呆れた顔で突っ込んだ。 「んんっ、過去の失敗は糧にする性分なんで、ご心配なく。 それじゃ、ゲート開くっすよ」 エドガーはばつが悪そうに咳払いをすると、地面に向かって手をかざした。過去の失敗が恥ずかしいらしく、ほんのり頬を赤く染めている。 エドガーが手をかざしてしばらくすると、地面から魔方陣が浮かび上がり、ほのかな光を放ち始めた。地面の魔方陣が二つに増えて縦にならび、上にある魔方陣がエドガーの伸長と同じくらいの高さまで上昇し、空中で停止する。地面にある魔方陣と空中で停止した魔方陣が光で結ばれ、円柱形の光の柱がエドガーの目の前に出来た。 これがエドガーの転移魔法の入り口である。
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