エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。

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エドガーが、庭でみぞおちに重い一発を食らっている頃。ルクソニアは、森の中をヨドと並んで歩いていた。 山歩きに不向きな革靴を履き、不馴れな砂利道を長時間歩いていたルクソニア。 体力はとうに限界を越え、気力だけで歩いていた。ヨドに置いていかれないよう、必死に隣を歩く。 「ルクソニア嬢、顔色が悪いな。 そろそろ休憩にしようか」 ヨドの提案に飛び付きたい気持ちをおさえ、ルクソニアは首を横に振った。 「大丈夫よ、ヨド。わたし、まだ歩けるわ」 大人ぶりたいルクソニアは、強がってヨドに笑顔を向けた。子供だからこそ、ヨドの足を引っ張りたくはなかったのだ。ルクソニアは、大人と同じくらい自分はできるのだと、彼に示したかった。 「ルクソニア嬢。 少し、大切な話をしようか」 そんな彼女の強がりを見抜いていたヨドは、ルクソニアの肩に手を置き、歩を止めた。 つられて歩みを止めるルクソニア。ヨドはルクソニアの前に移動すると、視線を合わせるようにその場にしゃがんだ。 「ルクソニア嬢。 頑張るということは、無謀なことや、無理をすることではないんだよ。 この森は魔獣も沢山いるし、休めるときに休んでおかないと、いざというときに困ることになる。賢い君なら、それがわかるね?」 ルクソニアは静かに頷いた。 「とても賢明な判断だ、ルクソニア嬢。 ……それにね、私も歩き通しで、少し疲れてしまったんだ。 休憩を入れてくれると、大いに助かる」 そう言ってヨドはふわりと笑った。 ルクソニアは目をパチパチした後、声をあげて笑った。大人が素直に、子供である自分に弱味を見せてくれたことが嬉しかったのだ。 ひとしきり二人で笑った後、そばにあった木の根本に腰を掛け、ふたりは休憩をすることにした。
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