エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。

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「そんな顔をするものではないよ、ルクソニア嬢。 今の王の代では戦争が終わらないかもしれないが、次代の王が国をおさめる頃には、世の中の流れが少しだけ変わるかもしれない。希望をなくしてはいけないよ」 ルクソニアは澄んだ目で、まっすぐヨドをみて聞いた。 「次の王様が……戦争をなくしてくれるの?」 ルクソニアの瞳に、儚げなヨドの笑顔が映る。 「そうあってほしいと、私も願っている」 祈りにも似た言葉を、ヨドは噛み締めるようにつぶやいた。 「だからこそ私たちは、みずからの進むべき道を間違えてはいけないんだ」 強い意志を感じさせるヨドの瞳。 一陣の風が、ふたりの間を通り抜けていく。 「ルクソニア嬢。 この国はもうすぐ、変換の時を迎える」 「……変換の時?」 「新しい王を決める試験が、1年後に行われるんだ」 その瞬間、ルクソニアの目が大きく揺れる。 「それって……新しい王様に変わるってこと?」 ヨドは静かに、首を横に振った。 「次代の王を、皆で決める時が来たという話だ」 ルクソニアはヨドの言葉を聞き、頭に疑問符を浮かべた。 「それって、どういうこと?」 ルクソニアはこてんと首をかしげる。 「今までは任命制だったものを、変えるということだよ。 現国王である虹の王には、3人の息子がいる。その中から次代の王を一人、選ばなければならないが、誰が次代の王に相応しいのか、虹の王は見極めることが出来なかった」 「だから、みんなで決めるの……?」 「そう。皆が納得するかたちで、新しい王を選ぶために」 ルクソニアはその話を聞いて、無意識に胸元をぎゅっと握っていた。 心臓がドキドキしている。 ゴクンと唾を飲み込むと、ルクソニアははやる気持ちを抑えながら、ヨドに尋ねた。 「新しい王様は、どうやって決めるの?」 期待に満ち溢れた眼差しで、ルクソニアはヨドの言葉を待った。
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