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それを聞いたルクソニアは、笑顔でヨドに言った。
「それならぜひ、ヨドのお話を聞きたいわ!」
ルクソニアは期待に満ちた眼差しで、ワクワクしながらヨドの言葉を待つ。
「まずは一番年上である、赤の王子の話をしようか。ルクソニア嬢」
「赤の王子さまの話ね!」
嬉しそうに言うルクソニアに、ヨドは笑みをこぼした。
「ルクソニア嬢。
この国には3人の妃がいることは知っているだろうか」
ルクソニアは静かに首を横に振った。
「いいえ、知らないわ。
王妃さまが3人もいるなんて、王さまは欲張りなのね」
不満げに頬を膨らませるルクソニアに、ヨドはふわりと笑った。
「王を擁護するわけではないが、すべて政略結婚なんだよ、ルクソニア嬢」
「……政略結婚?」
ルクソニアは頭に疑問符を浮かべ、首をかしげる。
「利害だけで結婚したということだ」
それを聞いたルクソニアは、しゅんとしながら上目使いでヨドを見た。
「そこに愛はなかったということ?」
「残念ながら、そこに愛は生まれなかったようだ」
ヨドは少し困ったように微笑むと、話を続けた。
「現国王である虹の王は、国一番の腕をもつ魔法騎士の裏切りを恐れ、その娘と政略結婚をした。赤の王妃と名付けられた彼女は、虹の王との間に子を作る。それが赤の王子だ」
それを聞いた瞬間、ルクソニアの表情が明るくなった。
「赤ちゃんが生まれたなら、ふたりの間に、愛は生まれたんじゃないかしら!」
きらめく瞳でヨドを見るルクソニアに、ヨドは申し訳なさそうに微笑んだ。
「ルクソニア嬢。
残念ながらそんなに簡単には、愛は生まれないものなんだよ」
それを聞いたルクソニアは、不満げな視線をヨドに送る。
「愛がないのに子供を作るのは、悲しいことだわ。赤の王子さまは、きっとさみしい思いをしたんじゃないかしら」
ヨドは優しい微笑みを、ルクソニアに向けた。
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