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「ルクソニア嬢、あなたは優しい心根の持ち主だ。赤の王子も、それぐらい可愛いげがあれば良いのだが……」
「どういうこと?」
ルクソニアは目をぱちぱちさせて、ヨドをみた。
「残念ながら、彼はそんな事で傷つくような人柄ではない、という話だ」
ルクソニアは頭に疑問符を浮かべ、首をかしげた。
「彼のまわりにいる人間は、みな彼をこう評価する。逆らうものには容赦はしない、冷血無慈悲な王子だと」
ルクソニアは不安げにヨドをみて、聞いた。
「赤の王子さまは、こわい人なの?」
ヨドはふわりと優しい微笑みを浮かべて言った。
「彼はね。目からビームが出せると影で言われてしまうほど、目付きも鋭く、顔つきも恐い。きっとルクソニア嬢が会ったら、泣いてしまうのではないだろうか」
「そ……そんなにこわい人なの?」
今にも泣き出しそうな瞳で、ルクソニアはヨドを見つめた。
「気安くはないだろうね。
彼が本気を出せば、炎魔法で街をひとつ、更地に出来ると言われているし」
「更地に……?」
ルクソニアの顔がみるみる青くなった。
「そう、更地だ。怒らせてはいけない」
ルクソニアは真剣な目で頷いた。
「賢明な判断だ、ルクソニア嬢。
赤の王子は、幼い頃から戦場を駆け回り、数々の功績をあげてきた。そんな彼についたあだ名は、『虐殺王子』」
「虐殺……王子……!」
ルクソニアは衝撃を受けた。
「赤の王子が次期王になってしまったら、戦争は激化するだろう、彼は戦争推進派だから。
それを恐れて、黄の王子につく貴族も多い」
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