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ヨドは儚げな微笑みを、ルクソニアに向けた。
「そう、皆も思っていた。
虹の王も彼の活躍を期待し、ドンドン戦場へと送り出した」
ルクソニアはしゅんとしながら、ヨドをみた。
「それは少し可哀想ね」
ヨドはルクソニアに優しく微笑みかけた。
「ルクソニア嬢。
黄の王子が、大人しく戦場へと赴くとでも?」
「お……赴かないの?」
ルクソニアは窺うように、ヨドをみた。
「それはとてもよく、脱走した。
行軍の途中で脱走し、す巻きにされて、荷物と一緒に荷台で戦地へ運ばれたこともあると、耳にしたこともある」
ルクソニアは衝撃の事実に、意識が飛びそうになった。
ヨドはとても良い笑顔で、ルクソニアに聞いた。
「他にも黄の王子には表には出せない数々の逸話があるのだが、話した方がいいだろうか。ルクソニア嬢」
ルクソニアは頭に手をおき、青い顔をして言った。
「聞きたくないわ。
もうお腹一杯よ、ヨド。
どうしてそんな黄の王子さまにつこうとする貴族がいるのかしら」
「それは先ほども話に出てきた、利害関係が絡んでいる」
ルクソニアは、目をぱちくりさせてヨドをみた。
「利害関係……?」
「黄の王子の母親・黄の妃は、今現在戦争をしている国の姫だ。
彼を王座につけ相手国に停戦を申し込みたい穏健派や、バカな黄の王子を利用して甘い蜜を吸いたい悪い貴族らが、彼のまわりに群がり王にしようと目論んでいる。
そしてそれら有象無象を裏で操っているのが、黄の妃だ」
ルクソニアは真剣な目で、呟いた。
「黄の妃……」
「そう、黄の妃だ。
彼女は非常に頭が切れる。
黄の陣営が日に日に勢力を拡大しているのも、彼女が裏で暗躍しているからだと言われている」
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