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「こわい人なのね、黄のお妃さま……」
視線を落とすルクソニア。
「勢力としては、恐らく黄の陣営が一番多いだろう。次に多いのが赤の陣営。この二つの陣営が、拮抗した力を有し、争っている。
そしてあまり貴族に支持されていないのが、青の王子率いる青の陣営だ」
ルクソニアはおずおずと上目使いで、ヨドに聞いた。
「青の王子さまは、どうして貴族に支持をされていないの?」
ヨドの瞳が、悲しげに閉じられた。
「それは彼が幼いころに黄の妃の計略にはまり、王族殺しの企てをしたとして、まわりの信用を失ったからだ。青の妃がその責任を負い処刑されたが、それでも日増しに彼への風当たりは強くなっていき、遂には王宮を追い出されてしまった。まわりにいた人間もクモの子を散らすように去っていき、彼はすべてを失ってしまう。
青の王子が貴族に支持されていないのは、そういった理由だ」
ルクソニアはそれを聞き、唇をきゅっと噛むと、今にも泣き出してしまいそうな瞳でヨドを見る。ヨドは穏やかに微笑むと、ぽつりと言った。
「ルクソニア嬢。
あなたまで悲しむことはない」
ルクソニアの瞳が涙でにじんでいく。
「だって、とても悲しいのよ」
ルクソニアはポロポロと涙を落としていく。ヨドはそっとルクソニアの頬に触れると、優しく涙をぬぐった。
「彼のために涙を流してくれてありがとう、ルクソニア嬢」
ヨドは悲しげで優しい微笑みを、ルクソニアに向けた。ルクソニアの瞳が、揺れる。
「ねえヨド。
青の王子さまはいま、どうしているの?」
「田舎町の古城に居を移し、細々と暮らしているよ。……とはいえ、ただ泣き寝入りしているわけではないが」
ヨドがふと笑みをこぼす。
「どういうこと?」
潤んだ瞳で、ヨドを見つめるルクソニア。
「ただでは転ばないタイプなんだよ、彼は。自身の境遇を嘆き、絶望するようなタマじゃあない」
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