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「それでもヨドは、青の王子さまのことが好きなんでしょう?
嫌いならそばにはいないもの」
ルクソニアはニコニコと、ヨドをみつめている。ヨドは返答の代わりに、優しい目をして微笑んだ。
「他の人達もね、きっとヨドと同じだと思うの。だからきっと、頑張れるんだわ!」
満面の笑みで言い切るルクソニアを微笑ましく思いながら、ヨドは言った。
「皆が青の王子と共に団結して頑張る事が出来るのは、きっと彼に期待をかけているからだろう」
「期待?」
目をパチパチしながら、首をかしげるルクソニア。それを見てヨドはふわりと笑う。
「彼が王立選に出られるのは、青の妃の故郷である獣人の国との戦争を、無血で停戦させたからだ」
「無血で停戦……?」
ルクソニアの頭に疑問符が浮かぶ。
「簡単に言えば、血を流さずに、戦争を一時的に停止させたということだ。
彼は自分の母親の故郷と、戦争をするつもりはなかったからね」
ルクソニアは少し戸惑いながら、ヨドに聞いた。
「……どうして戦争になったの?
お妃さまが身分の低い獣人だったから?」
ルクソニアは、窺うようにヨドを見る。
「ルクソニア嬢。青の妃が処刑されるまでは、獣人にも対等な人権が保証されていたんだ。
しかし青の妃が処刑されたことで関係が悪化し戦争に発展した結果、差別が生まれた」
ルクソニアはしゅんとして、視線を落とした。
「それはとても悲しいことね」
「この国も青の妃を処刑した手前、引くに引けなくなった所もある。その結果、戦争になったのだから、実に愚かしい行いだ」
ヨドは眉間にシワを寄せた。
「だから青の王子さまは、戦争を止めたの?」
ヨドはふわりと寂しげに微笑んだ。
「それが青の妃の、願いでもあった」
「青のお妃さまの……願い。
とても優しい方だったのね」
「とても美しく、平和を愛する方だった。
だからこそ青の王子は、戦争を無血で停戦させるという奇跡を起こさねばならなかったんだ。
戦争一辺倒だったこの国に、戦争をしないという新たな解決策を示す為に」
ルクソニアの瞳がきらめいた。
「青の王子さまが目指しているのは、戦争のない世界なの?」
ヨドはクスリと笑った。
「なかなかの無理難題だろう?
魔法も使えないただの人の寄せ集めで、彼はそれを成そうとしている」
ルクソニアはごくりと唾を飲み、真剣な目でヨドに聞いた。
「実現……できるのかしら」
ルクソニアはドキドキしながら、ヨドの言葉を待った。
「奇跡を起こす力はあると、私は思っている。だからこそ今、それを助けてくれる仲間を募集中だ。
今からあなたのお父上も口説きにいく。
協力してくれるだろうか、ルクソニア嬢」
軽くウインクをするヨドに、ルクソニアは満面の笑顔で答えた。
「わたしで良ければ喜んで協力するわ、ヨド!」
それを聞いて、ヨドは優しく微笑んだ。
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