エピソード1 元姫、森でイケオジと出会う。

2/87
前へ
/211ページ
次へ
一方その頃、森の中では。山歩きに不相応なドレス姿の幼い少女が、革靴で砂利道を歩いていた。 彼女の名はルクソニア。 丘の上にある古城に住む貴族の娘であり、騒動を巻き起こしている張本人である。 「ふうー! ぜんっぜん、越えられないわ……!」 少女は額に浮かんだ汗を手で拭いつつ、延々と続く山道に嫌けがさしていた。 城を出て、かれこれ2時間は歩いている。 しかし景色が全然変わらない。 見渡す限りどこまでも続く、森。 延々と、森。 歩けど歩けど、森。 もう森しかない。 (なんとなく勢いでここまで来ちゃったけど、なんかもうしんどい……) 歩き疲れたルクソニアは、その場でへなへなと座り込んだ。 木漏れ日のなか、一陣の風が吹き抜け、ルクソニアの頬をかすめる。 木々が揺れる音、鳥のさえずり、なにかの動物の足音。 目を閉じれば、様々な音がルクソニアの耳に入ってくる。それは城の中では聞けない音だった。 (そうだわ。私、森の先へ行きたかったんだわ) 決意を新たに、ルクソニアは静かに目を開いた。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

183人が本棚に入れています
本棚に追加