エピソード2 元姫、魔法について学ぶ。

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それから20分後。 今度はヨドを見送るために庭先へ出た、リーゼンベルク、ルクソニア、エドガー、泣きぼくろが印象的なメイドの4人。 ルクソニアが瞳に涙をためて、ヨドの足にしがみついている。 「もう帰っちゃうの? ヨド。 もっとゆっくり出来ないの?」 ヨドはふわりと微笑むと、ルクソニアと視線を会わせるためにしゃがんだ。 「ルクソニア嬢。最後に私が言えるのは、希望を捨てないことだ。再会の時は意外と早いだろう。しかし、それが叶うかどうかは、あなたの心根の強さにかかっている」 「わたしの、心根の強さ?」 ヨドは静かに頷くと、言った。 「諦めないでいてくれるだろうか。 ひとりになっても希望を捨てず、前を見て、今できることを努力できるだろうか」 ルクソニアは目をぱちぱちさせながら聞いた。 「それは約束?」 「約束だ、ルクソニア嬢。 すべてはあなたの選択次第だ」 ルクソニアは両手で涙をぬぐうと、ヨドに向かって、無理矢理笑顔を作って言った。 「わかったわ、ヨド。 わたし、強くなる。 今よりももっと、強くなるわ!」 ヨドはふわりと微笑んで言った。 「それでこそルクソニア嬢だ」 ヨドは静かに立ち上がった。 「ルクソニア嬢。 名残惜しいがそろそろ帰らせてもらおう」 ルクソニアは1歩後ろに移動し、ヨドから体を離す。 力なく手を振り、泣きそうな顔で笑顔を作った。 エドガーがヨドに聞いた。 「本当に送迎、いらないんすか? わざわざ徒歩で森を抜けなくても、転移ゲートですんなり帰れるのに……」 エドガーが納得いかない顔でそう言うと、ヨドは伏し目がちにこう言った。 「ルクソニア嬢のためにも、出来るだけ情報がほしい時分だ。道行く人々の未来を見ながら帰るのも、私の大切な仕事だ」 「またその話かァ。しつけェぞ、ヨド殿。」 リーゼンベルクが睨み付ける。 ヨドはまっすぐにリーゼンベルクを見て、言った。 「歯がゆいだろうが、今は我慢してほしい。いずれ時が来れば尽力する。それまで待っていてほしい」 リーゼンベルクは大きくため息をつくと、言った。 「まァ、そこまで頑なに言い張るなら、期待しないでその手助けというのを待つとするかァ」 「そうっすねえ。一応、用心するに越したことないっすし、警備もしっかり固めとくんで、ヨドさんが言う物騒な予言は起こらないっすよ、残念ながら」 べっと舌を出すエドガーに、ヨドは穏やかな顔でこう返した。 「来るべき日に使者を出そう。その時まで、しばしの別れだ」 「使者ねぇ。まあ、来なくてよくなるようにうまく立ち回るっすよ、ね、旦那様!」 エドガーからアイコンタクトを受け、頷くリーゼンベルク。 「あァ。せいぜい無駄骨になるよう、努力してやんよォ」 「被害が少なくなるよう、私も協力しよう」 ヨドとリーゼンベルクは互いにまっすぐ見据えたあと、握手をした。 そのあとヨドは、城の敷地を出ていく。 「ヨド~! またねー!」 涙をボロボロこぼしながら、ルクソニアが手を振りながら叫ぶ。 ヨドは振り返り、一礼して、森の中へと消えていった。
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