アルバドの最後の息子

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朝の五 時(グン)。朝の早いミラールも、この時間はまだ夢の中である。が、何やらガサガサいう音で目を覚ました。隊長居室の下は、使った事さえない武器をしまい込んだ武器庫であり、昨日そこに場所をとって、ドラゴンの寝床としたのだ。音はそこから聞こえて来る。 「早いわねぇ、あのコ…」 ミラールがそう呟き、もうひと寝入りしようとした刹那、ドンッと下から突き上げられ、彼女はベッドから跳ね上がった。 「なっ…?」 驚いて飛び起きたところへ二度目、更に三度目で、彼女はベッドから転がり落ちてしまった。 ミラールはガウンを羽織ると階段を駆け降りた。武器庫のまわりには、既に兵隊達が起き出して取り巻いていた。誰も中までは入れないでいる。その中へ、ミラールはずんずん入っていった。 ドラゴンは、尾で壁を叩き、跳ね上がって天井に頭突きをしたりと大騒ぎであったが、ミラールの姿を見ると、ピタリと暴れるのをやめた。寂しそうな目でミラールを見る。 「どうしたの?そんなに大騒ぎをして。傷が痛むの?」 ミラールの問いに、ドラゴンは激しく首を振ると、彼女に向かって突進して来た。 「危ないっ!!」 思わず兵隊達が声を上げたが、ミラールは動かなかった。そんな彼女に、ドラゴンはひしとしがみついた。ドラゴンは立ち上がってもミラールの腹くらいまでしか高さはない。その彼女の腹に顔をうずめて、すがりついている。 「ど…、どうしたの?」 ミラールは目を丸くして尋ねた。大暴れされては大事(おおごと)なので、取り押さえてやろう、と思っていただけに、思いっ切り拍子抜けしたのだ。 ドラゴンは、ただ顔をすりつけただけであった。 「やいやい、どうしただいやあ?」 壁の向こうに隠れていたロペルが顔をのぞかせた。 「どうしたの…?もしかして、ひとりで寂しかったの?」 そのミラールの言葉に、ドラゴンは一際強く顔をすりつけた。 「えー」と、マーカス。「あれで甘えてただかいやあ。ドラゴンのする事は見当もつかんやあ」 「そうだったの」ミラールは微笑んだ。「何だかんだ言っても、かわいいところがあるじゃない」 「スケールのでかい甘え方だ」 リスキンがぼそっと呟いた。 「よし、決めた!」 いきなりミラールが大きな声を出した。皆、ドラゴンも含めてミラールの顔を見る。 「何を決めたのですか?」
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