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石の階段は蛇のようにとぐろを巻きながら、下へ下へと延びる暗闇へと続いていた。
壁にそって連なるランプが代わる代わる点灯し、俺が行く足元を薄気味悪く照らしてくれる……
侵入者に対してなんてご親切なんだ。罠のようにみえなくもないけれど……
ようやく底まで辿り着くと、そこには真っ白な明るい空間が広がっていた。
明暗の差に目がチカチカして痛いくらいだ。
壁も床も白い大理石で覆われ、正面中央には祭壇のような四角い石段があった。
その後ろの壁には草花や動物の描かれた色鮮やかなステンドガラスが飾られ、宝石のような美しい光が溢れ出ていた。
ここが地下なのを忘れるくらい、現実世界から隔離された夢幻的な雰囲気だった……
天井が物凄く高い───────
今降りてきた階段の何倍もの高さだった。
きっとここは空間魔法によって創られた広間なのだろう。
学校の敷地を取り囲む、あのどでかい防御魔法と同じ魔導師が創ったに違いない……
全身の毛穴がピリピリしてここは危険だと知らせてくる。
「シャオンの奴…どこいった……?」
だだっ広い広間を見渡すがシャオンの姿がない。
壁際にズラっと並んでいる扉のひとつが少し開いていた。
その扉のそばまで行って中を覗いてみると、中身がぎっしりと詰まった背の高い本棚が、見渡す限りに整然と並んでいた。
本棚には世界中の様々な言語で書かれた書物が大量に集められていた。
手前の本棚には数々の魔法書や歴史書、歴代の魔導師の伝記といった学校の図書室にあるものと変わりない本が置かれていた。
でも奥に進むとその装いは違ってきた。
書物というより、手書きの報告書が目立つ……
手に取って開いてみると、禁止されている黒魔術や古代魔法について詳細に書かれていた。
普通に生活している人にはおよそ目にすることのない内容だ。
そして──────
狼男やフランケンシュタイン、人魚にヴァンパイアといった文字も並ぶ……
どれも空想上の存在として語られている生き物だ。
「くだらねえ資料をせっせと集めやがって…暇人か。」
こんなもんより今はシャオンだ。
長い本棚の列を一つ一つ確認しながら歩いていると、遥か前方にシャオンとは違う白い影を捉えて素早く身を隠した。
……なんだ今のは?
気配が全くしなかった……
本棚の隙間からもう一度ソレを確認した。
目で見ているからそこに居るとわかるが、あれは一体なんなんだ……?
そいつは白くて地面にまで付きそうなコートを着ていた。
水色のスカーフを帽子のように深く被り、顔には真っ白い仮面を被っているのか霞むようにぼやけている。
その得体の知れない者は本棚の間を音も立てず滑るように動き回っていた。
後から入ってきたのか最初からいたのか……
言えることは、あの白コートに見つかると非常にヤバいと言うことだ。
白コートが本棚の角を曲がった時、背中に描かれたマークが見えた。
……ああ、やっぱりそうか──────
背中には特殊な魔法の糸で刺繍された、上部が欠けた金色の星が印されていた。
それは俺がこの世でもっとも関わりたくない奴らのシンボルマークだった。
不味いなんてもんじゃない。
ただでさえ学校を取り囲むあの防御魔法で逃げ場なんてないのに……
こんな場所で顔を見られるのだけはなんとしても避けなければならない。
俺は被っていたニット帽を髪の毛が見えなくなるまでスッポリと被り、腰に巻いていたバンダナで目から下を覆った。
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