157人が本棚に入れています
本棚に追加
どの木も樹齢何百年も経つほどの大木だった。
こんな規模の森が学校の中にあるってんだから驚きだ。
地面から盛り上がった幾つもの太い根っこを越え、あの紅いモノが見えた辺りへとやってきた。
「でけえな…千年ってとこか……」
そこには一際大きな木がそびえ立っていた。
四方八方へと広がった幹に青々と生い茂った大きな葉っぱ……
この木が歩んできた途方もない時の長さを感じずにはいられなかった。
しばらく感慨深くふけっていると、上からなにかが降ってきて避ける間もなく押し潰された。
────痛っってえ……
なんだっ?なにが落ちてきたっ?!
「すまない。足が滑ってしまった。」
落ちてきたものが俺の背中に乗っかりながら謝った。
人かよっ!!
こんな巨木で木登りか?!ワンパクすぎんだろ!!
「いつまで乗ってんだっ?!早くどけ!!」
振り返ってそいつの顔を見た瞬間、今までのどす黒い気分がパァっと晴れ渡った。
めちゃくちゃ可愛いっ───────!!
大きくて切れ長なグリーンの瞳が印象的な、美しく整った陶器のような顔立ち……
サラサラで柔らかなプラチナブロンドの髪が太陽の光で眩しく輝いている。
肌は透き通るくらいに白く、長い手足がスラリと伸びていた。
「本当に悪かった。立てる?」
その憂いを帯びた瞳に影を落とし、心配そうに俺のことを覗き込むと手を差し伸べてきた。
すっげえ……天使みたいだ。
少しヒヤリとする彼女の手を掴んで立ちあがった。
彼女は俺の服に付いた砂を払って怪我もないことを確認すると、じゃあと言って軽やかに校舎へと駆け出した。
……はっ!惚けて見送ってる場合じゃない!!
「ちょっと彼女!新入生だよね?どのクラス?」
彼女はピタリと立ち止まると、つかつかとこちらに向かって歩いて来た。
「誰が彼女だ?!よく見ろっ。僕は男だ!」
「………はい?」
目が点になった。
いや、どう見ても女だろ?
確かに男物の制服のズボンは履いている。でも女子はスカートかズボンのどちらでも選べたはずだ。
長めのショートヘアも、どちらの性別でもおかしくはない。
そいつは端正な顔で俺を睨みつけていた。
間近でじーっと見ても女にしか見えない。
手っ取り早く確かめるしかないなと思った俺は、手をある箇所へと伸ばした。
「マジかよおまえ、チンチンあるじゃん。」
チッ、なんだよ……
いくら可愛くても男には全く興味はない。
青ざめて固まっているそいつを残して校舎へと向かおうとした時、頭から痺れるような激痛が全身に走って地面へとぶっ倒れた。
薄れ行く意識の中で、そいつが足早に去って行く姿が見えた。
どれだけ気を失っていたのだろう……
まだ痺れる体を持ち上げて校舎へと向かった。
「君、どうしたんだい?気分でも悪いのかい?」
この学校の先生だろう…フラフラと歩く俺を心配して話しかけてきた。
「大丈夫です。ちょっと…足をくじいただけなんで。」
「そうかい?もう各クラスでHRが始まっているから急いだ方がいいよ。」
この体への衝撃は何度も受けたことがある。間違いなく電撃魔法だ。
しかもかなり強烈だ。
……さっきのあいつが出したのか……?
魔法学校に入学したばかりの生徒が出せるような代物じゃない。
あいつはいったい─────……
最初のコメントを投稿しよう!