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校舎は石で出来た古城をそのまま利用しているせいか、空気が重苦しく薄暗かった。
凸凹とした石畳のような歩きにくい廊下の一番奥に、合格通知に書かれていた俺のクラス、A《アルファ》があった。
金属の装飾が施された分厚い扉を開けて教壇に立つ人物を見てゲッとなった。
そこには今朝俺を迎えにきたあの威圧的なおばさんが陣取っていたからだ。
「初日から遅刻よ、ツクモ・カガミ。早く席に着きなさい。」
「もしかしておばさんがこのクラスの担当なのか?」
おばさんと言われたことが癪に障ったのか、ギロリと睨んできた。
「私の名はマダム・ホーリィ。いいから早く席に着きなさい。」
マジかよ……サイアクだ。
席に着けってどこにだよ……
教室を見渡すと、4人掛けの長机が教壇に向かって半円状のすり鉢のように並んでいた。
どうやら真ん中を境に右と左で男女に分かれているようだ。
遅れてきた俺を、80人はいるクラスメイトが見下ろしてきているので圧迫感がエグい……
とりあえず右側に空いている席を一つ見つけたので急いで座ると、隣にはさっき俺に電撃魔法を食らわしたあいつが座っていた。
咳払いをしたり指で机をトントンと叩いてみたのだが、チラリともこちらを見ようとしない。
なんだこいつ……無視か?
イラっときて肩と肩が触れるほど体をすり寄せた。
「おい。誰のせいで俺が遅刻したか分かってんのか?」
「ツクモ・カガミ!私語は慎みなさいっ!!」
マダムから完全に問題児扱いされている。
にしても絶対に気付いているはずなのに、電撃野郎はスカした顔してそっぽを向いていた。
ガン無視とか……腹立つ奴だな~っ。
「みんな揃ったところで寮の部屋分けを発表するわ。寮は4人部屋。今座った同じ机の4人がルームメイトよ。これから三年間、仲良くしなさい。」
うん?……4人?
今座ってる机の4人がルームメイトって……
「ちょっと待て!なんでこいつと一緒なんだ!!」
思わず立ち上がって抗議した。
こんな電撃魔法をぶっ放す危険な野郎と相部屋だなんて冗談じゃないっ!
「適当に座った席でそんな重要なこと決めんなよ!」
「物事に偶然はないわ。あるのは全て必然。同じ机に並んで座った。これは運命なの。」
おばさんは当然かのようにぴしゃりと言い放った。
なんだそのめちゃくちゃな理論は……せめてくじ引きくらいさせろっ!
「それから……こいつなんて言い方しないの。彼は入学試験を歴代トップの成績で合格した魔法界期待のホープ、シャオン・ドゥ・アルディよ。」
─────歴代トップって……
みんながどよめきながらシャオンを見た。
「これから三年間、彼と魔法を学べると言うことはとても光栄なことよ。」
一昔前は桁違いの魔力を持った人間がゴロゴロいた。
凄腕の魔導師が一人いるだけで国同士の勢力図は大きく変わり、人々には魔法による潤いをもたらす……
この学校には誰もが知るような魔導師がたくさん卒業生でいたはずだ。
そんな名だたる魔導師達を差し置いて、歴代一位だと?!
シャオンは相変わらずツンとスカしていて、周りの喧騒など気にも止める様子がない。
こいつ……最初は天使みたいに見えたのに、今はすっげえ嫌味な野郎にしか見えないっ。
こんな奴と同じクラスで同じルームメイトでやりたくもない魔法の勉強を三年間も……
「サイアクだ……」
俺は頭を抱えながら深いため息をついた。
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