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恋のためだ。
生まれてきた意味を、俺はそう断言する。
命の消費期限っていうのは決まっている。
鶴は千年、亀は万年、人は80年も生きればいい方だし、セミは6年程度土の中で生きて、成虫になってからは7日程度しか生きられない。
最近の研究で、セミの寿命は1か月ほどあるなんて言われてるけど。
それでも、年単位の寿命をもつ生き物に比べたら、1週間も1か月も誤差みたいなものだろう。
外敵に捉えられたりする可能性を考えれば、1週間持たないなんて可能性もある。
命短し恋せよ乙女。なんて。俺は男だから。
命短し恋せよ童貞。かな。
意味は変わらんはずなんだけど、語呂が悪いな。
とにかく、恋のために命を使い切る。
それが、俺の決めたことだった。
子供のころから、何年も何年も心に誓い続けたことだった。
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外に出ると、周りはひっそりと静まり返っていた。
仲間の声が一つも聞こえない。
そのことに疑問を覚えたが、ライバルが少ないことはいいことだ。
俺は、何度か発声練習を行った。
悪くない。この声なら、かなりいい線いきそうだ。
俺は自信を持つ。
問題は、どこで恋人を探すかだ。
できれば、目立つ場所がいい。
俺は、飛び始めた。
太陽が昇り切ってからでは、他の仲間に先を越されるかもしれない。
今のうちに、ベストスポットを探す必要がある。
しばらく進むと、強烈な明かりが目に飛び込んできた。
それは、巨大な木だった。
光るツタが何重にも絡みつき、色とりどりの実がついている。
でかくて、はでで、目立つ。
これは、いい。
こんな場所で求愛をすれば、カップル成立100%だ。
実際、一組のつがいが、木の下で身を寄せ合っている。
俺も便乗させてもらおう。
俺は、木にしがみつき、最高の愛を、命がけで叫ぶ。
「みいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん」
木の下にいたつがいの片割れが言った。
「クリスマスに蝉なんて、珍しいな」
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