2回目〜1年前〜(悠)

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2回目〜1年前〜(悠)

 俺は夕方の6時にランニングマシンの上で足を動かしていた。ここはモールの3階の端にある小さなスポーツクラブ。昼間はヨガやエアロビなんかの講習もやっているみたいだが、夜は個人で身体を鍛えたい人に開放している。会員になって月毎に料金を払えば、いくらでも使い放題だ。 「はあ〜、気持ちいいっ!」  設定した時間が過ぎ、歩いて呼吸を整えながら満足してた。高校の時には部活動に入らなかったが、中学の時には陸上をやってた。長距離。駅伝の選手にも選ばれたこともある。そこそこ記録は出ていたと思う。 『でも、元来飽きっぽいんだよなあ。』  高校で中学の時の部活のセンパイに声をかけられても、気持ちが向かなかった。それよりも、入学してからすぐに告白された女の子が気になってた。 『次、筋トレするか!』  ちょうど空いた腹筋のトレーニングマシンに行こうとランニングマシンを降りた。  1時間ほど体を動かして、シャワールームへ向かう。ここ3週間ほど、1日おきにこのクラブへ足を運んでいた。 「最近、よく会いますね。」  ロッカーに荷物を置いて服を脱ぎ始めた時、隣に来た奴に声をかけられた。俺より10㎝以上低い。170は……ないな。色白、小柄。茶髪の髪も長く、女みたいな顔をしている。 「そう?」  俺の記憶にはなかった。走る時には、呼吸やペースに集中して他の事が考えられなくなる。雑念が払われて、走った後には爽快感しか残らない。 「ええ。僕が来ている時には必ず走ってます。家、近いんですか?」 「ああ。ま、そんなとこ。」  別に詳しく話す必要はないだろ。 「僕は、一階の家具屋で働いています。親戚の店で……。」 「へぇー。」  じゃあここで会うのも納得だな。 「走ってるの?」  服を脱ぎ始めたソイツに声をかける。最後にボクサーを脱ぎ捨て、ロッカーに突っ込むと、タオルを取り出して鍵をかけた。 「ええ……まあ……。」  ソイツが俺の下半身に目が釘付けになってた。羨ましいのか? 背が高い分サイズも違うかもな。でも、用は中身……テクだから。 「じゃ、お先に。」  動きを止めたソイツに話しかけてシャワー室に向かった。 「ああ、さっぱり!」  部屋に帰ってシャワーを浴びてもいいけど、運動してからすぐに汗を流せるこの施設が気に入っている。大満足で夕飯をどこで摂ろうか考える。  ロッカールームに戻ると、さっきの男が服を着て、同じ所に立っていた。 「あれ? シャワー浴びた?」  声をかけて、ロッカーに鍵を突っ込んだ。 「……いいえ。」  さっきと違う小さな事に男に顔を向ける。どうしたんだ? 無口になったな。  ボクサーを履いて、鞄からシャツを出して着る。ジーンズを出して履こうとして、やはり聞いてみることにした。 「どうしたの?」  思い詰めた顔をしている……何だ? 「……あの……あのお名前を聞いてもいいですか?」
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