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「俺、今仕事で来てるんだよね。」
タクシーを降りてからは手を繋ぐことは遠慮したが、裕次郎という男はずっと隣から離れなかった。フロントを素通りしてエレベーターで6階に上がり、1番端の部屋をカードキーで開けて中に入ると、そこはシングルサイズのベッドが置いてあるだけの狭い部屋だった。
「どちらにお住まいなんですか?」
「……ん? ……ずっと遠く。」
遠く? じゃあ何故俺のことを知っているんだろう?
「どうして俺のことを?」
促されるままベッドに腰を下ろして聞いてみた。
「探した……。俺、真人が好き。……気がついたんだ。真人のことを追いかけたかった……。俺のものにしたかった。」
隣に座って両手を握り締められ、真剣な表情で言ってきたかと思うと、突然、メガネを外した男が俺を押し倒して覆い被さってきた。
「裕次郎さん!」
慌てて顔をガードする。
「『ゆう』って呼んで。」
両手を布団に縫い付けられ、目の前に顔が迫ってきた。
「……ゆう……さん、どうして……。」
その後の言葉は、ゆうの唇の中に消えていった。
「真人……好き……。」
鼓動がどんどん速くなる。耳元で囁かれた言葉に全身が痺れた。初めての体験だった。額や頬、瞼にキスが落ちてくる。
「真人……真人……。」
ゆうの囁きが……求められているという事実が、俺の思考を奪っていった。
「もう一度……。」
いつしか、俺からも口づけを求めていた。
「あ。……ゆうさんっ!」
後ろに指を入れられて、ハッとする。いつの間にか俺は裸にされ、足を持ち上げられて、恥ずかしいところを全部ゆうの前に晒していた。
「真人……一人でする時、ここ弄ってる?」
クチュクチュと卑猥な音を響かせて長い指を動かすゆうが耳元で囁く……。恥ずかしくて顔から火が出そうだった。何も話せなかった。手で顔を覆い隠すので精一杯だった。
「それとも……経験あるの?」
「あ、あるわけないっ!」
手をどかすと、目の前にゆうの顔があった。優しく微笑む顔……端正な顔立ち。やっぱり……似ている……。
「じゃ、真人の初めて……俺にちょうだい。」
そう言ったゆうから激しいキスが落とされた……。
「あああああああっ!」
初めての経験は、俺の中を嵐のように駆け抜けていった。俺は何度出したか分からないくらいだった。自分で弄るのとはわけが違う。ゆうは俺のイイところを見つけると、執拗に攻めた。俺がイク度に何度も「好きだ。」と言い続けて……。
……気がつくとゆうに腕枕をされ、顔を覗き込まれていた。
「気がついた? 何か飲む?」
チュッと頬にキスしたゆうが腕を伸ばしてコンビニの袋の中から、炭酸水を取り出した。
「はい。運動したから水分補給。」
いたずらっぽい笑顔でペットボトルを渡され、また顔が熱くなってきた……。
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