14[最終話].

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巨大な太陽が海へと溶けていくような美しい日暮れ。 サーフボードを抱えて海から上がってきた葭弥は夕焼けを振り返った。 あの嵐の夜から一月が経っていた。 結局、遺体の上がらぬまま哲雄の葬儀は日本で行われたと葭弥はテレビで知った。 真人も戻らなかった。ロジャーやディータが葬儀を提案したが葭弥がそれを拒否した。 どんな形であろうと真人は自分の元へと戻るからそれまでは何もする気はない、と頑なに拒んだのだ。 日々は過ぎる。まるで何事もなかったかのように。 日本に居た時のように葭弥は頻繁に海に出るようになった。 日本でのサーフィン漬けの日々は充実し、仕事も楽しかった。何もかも恵まれた世界に居た葭弥はある日運命の出会いをした。 キラキラと輝く黒髪を持った碧眼の、少年とも言えるような容姿の彼に一目で心が奪われた。 今までの恋愛の価値観を一瞬にして覆す程の衝撃。 自分は彼に出会う為に生きてきたのだと本気で思わせた瞬間だった。 そう、あの時と同じ。彼はビーチに佇んでじっとこちらを見つめていた。瞬きすらも忘れて真っ直ぐに向けられる眼差しに動揺している自分を悟られないように必死で普通を装った。 立ち止まった葭弥は太陽を背負って光り輝いていた。 髪から垂れた雫が鍛えられた肌を伝っていくその様はひどく艶っぽかった。 「本島に流されたんだ。現地の人に助けられて事情を説明したんだけどそんな奇跡があるワケがないって信じてくれなくて、自力で泳いで渡って来ちゃったよ」 平然と自力で泳いだと言ってのける彼に普通の人間なら有り得ないと思うのだろうが葭弥は思わなかった。 何故なら彼は… ボードを落とし、手を伸ばして彼を抱き締める。 美しいビーチで抱き合う二つの影を優しく照らすのは巨大な太陽。見守るのは真っ赤に染まった広い海。包み込むのは暖かい風。 「ただいま。葭弥」 「おかえり。真人」 水平線へと太陽が沈みきる瞬間、緑色の光が水平線を走った。 それはグリーンフラッシュと呼ばれる美しい自然が織り成す奇跡の現象。 稀なその現象を見た者は幸せになれると言われている。 「光ったね」 「あぁ」 重なる影。 二人は誓い合うようにキスを交わした… End  2009/07/12 Rudy
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