13.

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乗り捨てられた車に哲雄と真人は居なかった。 ハーバーの管理者に聞くと自分達の制止も聞かずに海へと出たクルーザーが一艘あると答えた。 外を窺うと荒れ狂う夜の海が見えた。 「…俺は行く」 葭弥の言葉に陣内も頷いた。 危険なこととは分かっていてもこのままここで二人を待つなど出来なかった。 止める管理者を振り切り真人のボートへと向かう葭弥。ロープを外すように陣内に指示してボートに飛び乗ると背後でもう一つ、飛び乗る音がした。 振り返るとびしょ濡れになった幸子が立っていた。 「死ぬかもしれないんだぞ?」 「水の中で死ねるなら本望です」 やはり慎太郎の選んだ女だな、と葭弥は思った。 管理者に哲雄が本島への方角を聞いたとの情報をもらった葭弥は手摺りに掴まる陣内と幸子を確認すると船を進めたのだった。
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