ちょっとしたお出かけ

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大学の同級生である佐伯は知り合い以上、友達未満ってくらいの関係だ。 第一志望だった国立大学に弾かれ、否応無しに入学した私立の大学は、常軌を逸する高額な学費を存分に吸い込み年々巨大になって行く。 漫画まで称えた贅沢な図書館や構内に店を構えるスターバックスは佐伯のように親が学費を全額払え、その上でお小遣いが出るようなお金持ちの為だけにある。 親が必死で賄う下宿代を補う為のバイトに(いとま)が無い俺達奨学金組には不必要な施設ばかりと言える。 だからと言って、佐伯の事を嫌っている訳じゃない、友達では無いからこそ「あんまり知らない」混みで何となく虫が好かないだけだ。 その佐伯が、長過ぎる前髪をイジイジと練り回して言った。「6時間で完走した」と。 フルマラソンなんて走った事は無いが高校の体育で20キロちょっとなら経験がある。 そりゃ半分とフルマラソンでは違うのかもしれないけど、その時は2時間で走れた。 とにかく止まらずに走れば6時間って事は無いだろう。 思わず「遅…」と呟いてしまい、要らぬ反感を買った。その勢いで、とある大きなマラソン大会に応募してしまったのだ。 だって、「やれ!」とか「お前なら出来る」とか、悪友達に囃し立てられ、つい、講義室の椅子に上がって「おお!」とかやっちゃったからな。
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