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寝不足のせいかやや疲れた顔はしているものの、それ以上に全身に充実感をみなぎらせている沓見に問うと、果たして当然、という強気な応えが返ってくる。
「何しろ、再結成後初のフルアルバムだからな。待たせた手前、下手は打てねえだろ。その辺はメンバー全員、最高の出来だって確信してる。……まあ、マネージャーには徹夜なんて無茶し過ぎだって怒られたけど」
「そりゃそうでしょう。白崎さんにしてみれば、夏には全国ツアーも控えたこの大事な時期に、みんなに身体でも壊されたらそれこそ泣くに泣けないよ。彼にとっては、きみたちの健康管理も大事な仕事のうちなんだから」
「……て言うかあんたさ、最近、あいつにやたら感化されてきてない? 何か、俺だけうちと外にマネージャーがふたりいるみたいで落ち着かねえんだけど」
「……え、そうかな? 別にそんなつもりは……」
意外な指摘に目をしばたたいていると、ちょっと来て、と手首を掴まれ、人目のない柱の陰に連れて行かれる。
「……響? ……なに、どうしたの?」
驚いて声を上げる伊能の頭のすぐ脇に手を突いて、沓見が至近距離から苛立ちもあらわに言い放つ。
「……むかつく」
「……え……?」
「──言っとくけど、俺は『マネージャー』と同居する趣味はねえからな」
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