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ここに来てようやく、沓見が何に腹を立てているのかに思い当たって、くすぐったさについ頬が緩む。
「……うん。僕も、響のマネージャーになったつもりはないよ」
そう言って、不機嫌そうな彼の頬を引き寄せて触れるだけのキスをする。だが、唇が離れる間際、今度は沓見の方から後頭部を抱えこまれさらに深く求められる。
「……っ、ちょ……待っ、ん……っ」
そのままベッドになだれ込みたくなるくらいの激しい口づけを仕掛けられ、頭の奥がじんとしびれる。けれど、まだかろうじて片隅に残っていた理性が現状を認識したとたん、考えるよりも先に身体が動いた。
「……、ってー……」
「……っ、ごめん。痛かった?」
「……あのさ、キスしてるときに頭突きはねえだろ。舌噛んだらどうすんだよ」
「本当にごめん。そんなに強くぶつけたつもりはなかったんだけど。……ほら、もう時間もないし行かないと。ね?」
まだ痛そうに額をさすっている沓見を無理やり舞台袖まで連れ戻したところで間一髪、少し離れた場所で別のスタッフと話しこんでいた楢橋が、冷やかしの言葉とともにこちらに近づいてくる。
「──こらこら、きみたち。いちゃつくのもけっこうだけどほどほどにしときなさいよ。まったく、それじゃなくても四六時中一緒にいるのによく飽きないもんだねえ」
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