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「……監督……」 「は? 四六時中なんて一緒にいねえよ。悪いけど、俺も史隆も仕事があんの。そうそう家にばっかりいられっかよ」 「……あれ、その言い方だと、逆に仕事さえなければずーっと一緒にいられるのにって俺には聞こえるんだけど」  この手の話の場合、むきになった方が負けと昔から相場が決まっている。そして案の定、楢橋から繰り出された会心の一撃に沓見がぐっと言葉を詰まらせる。 「……誰もそんなこと言ってねえだろ。映画の構想とか言って、いっつも変な妄想ばっかしてるうちに耳までおかしくなったのかよ、おっさん」 「へえ、変な妄想って? よかったら、参考にしたいからそこんとこ詳しく聞かせてよ。……そうだな。ねえ、たとえば、ホテルのソファについた染みなんてどう思う? ほら、いやがうえにも妄想掻き立てられない?」 「……っ、あんた、本当にたち悪(わり)ぃ」 「……響、気持ちは分かるけどその辺にしといた方がいいよ」  相手が悪い上に、これ以上放置しておくとさらなる墓穴を掘ることになりかねない。仕方なく仲裁に入ると、完全に言い負かされた体になった沓見が頬を染めて悔しそうに唇を噛む。 「──監督」 「ん?」
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