episode 6. 望みうる未来

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「きっと、わたしにはそんな話はこないわ。勉強ができるわけじゃなし、器量がいいわけでもない。きっと一生、この孤児院で、小さな子たちの世話をしながら生きて、大人になって、おばあさんになるのよ。外の世界を見られるチャンスがあるなら、行くべきだわ」  その話を聞いたヴェルデは想像してみた。自分が大きくなって、どんなふうになっているのかを。するとやっぱり、エレンの言ったように、下の兄弟たちの面倒を見ながら大きくなって、いつかは黒い服を着て、教会で祈りを捧げながらこの孤児院で仕事をする。そういう未来しか想像できないのだった。 (きっとここにいる兄弟みんな、おんなじようなみらいがまってる)  小さな兄弟たちから頼られ、大人たちといっしょに孤児院の仕事をする。それが悪いとは思わない。そういう未来の選択肢もあるだろう。  だが、それは別にヴェルデでなくてもいいのだ。ヴェルデがやらなければ、他の誰かがやるだけだ。 (でもきぞくの人たちは、ぼくにようしにきてほしいと言った)  ならば、自分を必要としてくれる人たちのところへ行こう。  ヴェルデは、そう決心した。  小さなベッドに入って目をつむると、心地よい眠りがやってきた。夢の中で、新しい父と母に両手をつないでもらった。それは、とても幸せな未来の想像図だった。
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