episode 7. 新しい名前

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(このところよく町へおいでになるから、余計なことばかり興味を持たれる。困ったものだ)  フォ・ゴゥルは首を振った。人間で言うところの「やれやれ」という仕草だ。  そんなフォ・ゴゥルには目もくれず、無名の魔法使いは白い指をしなやかに躍らせて、空気中から水を呼び出した。そしてそれを、手に持った鉄の鍋に集め始める――なぜ鉄の鍋を持っているのかは不明である。  さきほどスルーしたときに叱られたため、一応「なんですか、それは」と尋ねてみる。 「そろそろ時間だろう? あの幼児は新しい家に無事着いたかな」 (なるほど、つまり鏡の代わりというわけか)  鍋に水を張れば、鏡と同じように、遠くの情景を映し出すことができる。  死体の群れを背に、無名の魔法使いは鼻歌さえ飛び出しそうなほど上機嫌で、即席の水鏡を(のぞ)き込んだ。 「ほぅ、なかなか立派な屋敷ではないか」 『住んでいる人間も、立派だといいんですけどね』  結果から言うと、フォ・ゴゥルの希望的観測は外れることになる。
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